学生時代に色んなアルバイトした。

その中でも面白かったのは、ぬいぐるみショーのバイト。はっきり言って見入りは良くない。確か1日のバイト料が3500円だった。

しかも、前日殺陣の練習がありそれにはバイト代が出ない。

それでもやっていたのは、色んなことが起きるからだ。

例えば、岡山のデパートでの出来事。

普段は、ウルトラマンとか仮面ライダー系のショーをするのだが、その時は、「人間もぐら叩き」のモグラをやらされる羽目になった。

これがまた重労働である。茶色の全身タイツに毛の生えたベストを着て、顔にはメイク。真っ黒いつけ鼻で、大きな箱の中に入る。

箱には、人の頭が通る穴が5つほど開いていて、中腰で穴から顔が出せる。その中に2人のモグラ役が入り、「ヨーイ。ドン」の掛け声で、ランダムに顔を出すのだ。それを子供がピコピコハンマーで叩く・・・・。

いわゆるヒンズー・スクワットの状態である。

ヒンズースクワットをしながらガキどもから殴られ続けるわけだ・・ほとんど拷問である。終った頃には身も心もボロボロ。

やっとイベントも終わり、舞台の裏で、ぶっ倒れていると、その時の興行主がやってきて言った。

「どうです、昼ごはん食べた後、休憩時間が1時間半ほどありますから、私の経営している映画館で映画でも見ませんか?」

勿論依存はない。舞台裏の控え室で昼飯を食べ始めたのだが、あまりの重労働のため食欲もでない。出てきたカツ丼を半分残し、待っていると再び興行主がやってきた。

「じゃ、映画見に行きますか?」
「はい、行きますけど、まだ着替えてませんので、着替えたほうがいいですよね」
「いやあ、大丈夫でしょう。着替えてると映画見る時間が減っちゃいますよ。それに昼の時間はお客全然居ませんから大丈夫ですよ。」
「そうなんですか」

なんとなく、釈然としないまま興行主の車に乗り込み、映画館への道を走り出した。勿論、格好はモグラのままである。

5分ほどで映画館に到着して、入り口に差し掛かった。映画の内容が気にかかったので聞いてみた。

「ところで、どんな映画なんですか?」
「いやあ、新作ですよ、新作。」

新作って・・・私はアクション物とかドラマとかそーゆー意味で聞いたのだが・・・。

入り口の掲示板に題名がマジックで書いてある。「緊縛いけにえ」・・・ポルノ映画である。

オイオイこちらは茶タイツだぜ・・・茶タイツでポルノ映画かよおおおおおお。そうは思ったが、折角の好意、断ることは出来なかった。

全身茶タイツの私と友人は、あへあへとよがる映画のかかる中、何となく「人生って何?」と考え込んでしまったのであった。